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「外国人親子が抱える教育問題~男女共同参画に取り組んできたスウェ―デンを参考に~」
2022年12月3日(土) 豊中市立生活情報センター「くらしかん」にて
基調講演:「スウェーデンにみる外国人児童教育と共生のあり方」
古谷大輔さん (大阪大学大学院人文学研究科教授 スウェ―デン専攻)
パネリスト: 村上自子さん(おおさかこども多文化センター)、海野バティさん(ネパール出身・通訳)
古谷さんの基調講演では、まずスウェーデンは昔から移民を受け入れている点が日本との一番の違いだと話されました。1960年代末より、当時の首相パルメをはじめ自己決定の権利を至上とするリバタリアニズムを背景に、移民にも国民と同じ条件の労働、住居、社会ケア、教育なのどの権利が与えられています。また子どもには母語教育を受ける権利が法律で認められており、学校は5人以上の生徒が望み教師が見つかれば母語教育の提供が義務となっているほか、在留許可(ヴィザ)なしの短期滞在や在留許可待ちの子どもにも第二外国語としてのスウェーデン語の学習権が認められているそうです。
またスウェーデンでは同じ屋根の下に住んでいたら同性カップルも異性間カップルと同じ扱いで養子も差別はない。古谷さんの子どもが通う学校にも親が女性2人という家庭もあったそうで、日本のように生物学的な血縁関係を重視していないという話や、所得税改革で課税対象が家族から個人になり、女性の自立により法的な「結婚」に意味がなくなり、事実婚が増えたという話もありました。ジェンダーにとらわれない男女共同参画をはじめ一見理想的にも見えるスウェーデン社会ですが、移民を中心に価値観の世代間格差が生まれていることや、徹底した個人の尊重によって教育の平準化が崩れて学校間格差や子どもの学力低下を招いている点など、現在スウェーデン社会が抱える課題も挙げられました。
続いてTIFAのメンバーでもあり20年以上外国にルーツを持つ子どもの教育に携わってきた村上さんからは、日本語指導が必要な児童生徒数がこの10年で約1.8倍になったこと、日本語指導が必要な子どもへの指導や支援体制の不足から現在約1万人の外国にルーツを持つ子どもが学校に行けていないこと、さらに見えないヤングケアラー問題の深刻化など、彼らが日本で直面する問題が語られました。
そしてTIFAの内外で活躍しているネパール出身の海野バディさんは、自分の子どもから授業参観に来ないでと言われたこともあったが、学校でネパールについての授業があってから自分のルーツを積極的に話したり明るくなったこと、支援しているネパール人家庭でクラブ活動や受験制度など日本の学校制度を知らない親が困惑するケースなど、自身の経験から外国人の保護者が抱えがちな苦労を話してくれました。
最後のパネルトークでは、古谷さんより、村上さんとバティさんの話を聞いて「法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」という憲法14条に反する日本の状況にショックを受けたとの感想が語られました。やはり、在住外国人がスウェーデン15%に対して日本は約2%ということもあり、憲法の対象も国民のみで、移民を正式に認めない日本政府の姿勢から来ているのではと感じました。ただ、大阪府は外国にルーツを持つ生徒を積極的に受け入れ母国語教育を提供している公立高校が8校あるという、府民として誇らしい情報もありました。
また質疑応答では、小学校教師が家族にいる参加者から、クラスに外国人3名に加えて障がいのある児童もいてとても大変そうだがスウェーデンではどうか?との質問や、トロント在住経験を持つ参加者からカナダとの類似点と相違点についての発言がありました。
盛りだくさんな内容のため時間が押してしまったものの、様々な角度からの話を聞ける充実した機会になったのではないでしょうか。