TIFAセミナー報告 「超少子化社会における外国人住民との共生」~ドイツの例から考える~(9月13日)

活動:
TIFAセミナー
記事更新日:
2014/11/09

TIFAセミナー報告

超少子化社会における外国人住民との共生 ~ドイツの例から考える~

講師:木戸 衛一さん (大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授)

2014年9月13日(土)すてっぷ (豊中市立男女共同参画センター) セミナー室にて

チラシはこちら

 

今回のテーマは「家事援助の外国人、国家戦略特区での先行受け入れをめぐる議論本格化へ」―という新聞報道が発端でした。誰もが生きやすい多文化共生社会を目指し、地域に根ざした国際交流や在住外国人支援活動を進めるTIFAの理念にふさわしいテーマです。日本とドイツは現在、少子高齢化社会を迎え、労働力確保を大きな課題とする点でよく似た状況にあります。そこで、ひと足早く「移民法」を定めたドイツの事例に学ぶことにしました。

講師は大阪大学大学院国際公共政策研究科で現代ドイツ政治を研究テーマとされる木戸衛一先生。「20世紀最大の悲劇を引き起こしたドイツと日本は、21世紀のあり方に特別の責任を負っている。平和で公正な地球社会をどう主体的につくっていくか、一緒に考えましょう」と、学生に呼びかけておられます。

講演は、今年のサッカーW杯で優勝したドイツチームがポーランド系・トルコ系・ガーナ系・チュニジア系・アルバニア系と、いかに多民族の人々で構成されていたかで始まりました。そのドイツは、実は20世紀初めまで移民送出国でした。ところが、第2次大戦後の1950年以降、外国人労働者を南東欧やトルコなどから多数受け入れ、目覚ましい復興をとげました。旧ソ連やルーマニア、ポーランドからドイツ系帰還移住者、亡命希望者、難民らも西ドイツを訪れました。また、旧東ドイツは同じ社会主義国・北ベトナムと協定を結び、ベトナム人契約労働者が多く働いていました。

そうしたなか、1989年11月9日にベルリンの壁が崩壊、翌年東西ドイツは40年の分断を超えて統一されました。その後、ドイツが「移民国家」へ移行したのは理想主義からではなく、現実の問題を前に政治が政策として取った選択でした。しかし、移住難民や、外国人労働者の2世3世の若者が抱える貧困や差別の問題が顕在化してきます。外国人労働者を「安い労働力」としてのみ見て、法的な権利を認めず、ドイツに共に暮らしながら疎外してきた結果ともいえるでしょう。

このような状況で1999年5月に国籍法改正案を可決し生地主義の導入や二重国籍を認めるなどして、2000年に施行。移民法案は2001年連邦議会で可決、各党派の協議・修正を経て2005年から施行されました。外国出身者が社会に溶け込めるように「統合政策」を導入し、定住外国人にドイツ語の習得やドイツの慣習・文化等を知る機会を設けました。しかし、開始直後からコースへの不参加、ドロップアウト、コース修了者のドイツ語能力不足の問題等に加え、2011年には反移民を主張する政党が台頭、ネオナチの事件が発覚しています。

こうした曲折はあるものの2006年、連邦家庭省内に反差別局を設置して、差別された人々の支援を多言語で実施、連邦移民難民局でも類似の取り組みを進めるようになりました。また、外国人排斥運動に対抗してドイツの市民社会は2012年、「人間の鎖」でこれを阻止しました。そして政府は移民を「人間」として受け入れる努力を続けています。これはドイツの憲法に当たる『基本法』第1条が「人間の尊厳は不可侵である。これを尊重し、および保護することは、全て国家権力の義務である」と定めていることによく合致しています。

他方、日本では今年6月制定の「日本再興戦略」が外国人材の活用を求め、技能実習制度の期間延長や対象職種を拡大し、建設分野の即戦力や家事支援人材として活用を企図しています。しかし、技能実習制度は過重で低賃金労働と人権侵害の温床で、「人身取引・強制労働」という国際的批判を受けています。

日本の歴史的文脈の「共生」は集団主義的な「和」であり、差異や差別を隠ぺいし同化を強要するものでした。紹介された大谷恭子さんの著作「共生社会へのリーガルベース(法的基盤)」では、“共生”とは、差別を克服しようとする人と人との関わりであり、それぞれのアイデンティティを尊重し、認め合い、助け合い、必要とし合い、許し合う関係ではないか。そして、“共生社会”とは、この人間関係を支え、維持する基底となる寛容な社会だと言われています。

講演後の感想では、「細かく難しい話もあったが、先進国としての責任を果たそうと苦闘するドイツの現状が見直せて良かった」(女性)、「移民政策・外国人政策がどうあるべきか、また、ドイツと日本の現状比較など考えさせられる点が多かった」(男性)などの声が聞かれました。

(TIFAセミナーグループ)

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