まなぶ
ふれあう
ささえあう
国際協力
- アフガニスタン女性支援プログラム
- パタン・ブンガマティ プログラム
- Happy Girls Home 「子どもの家」(終了)
- ドダウリ村住民のための支援事業
- ネパール大地震 緊急支援活動 (終了)
- ウズベキスタン プログラム
- TIFAネパール自立会 (終了)
- ネパールでの支援活動
- サナチェタナ小学校 支援プログラム
今回のTIFAセミナーは、玉本英子さんが、2019年10月、シリアのラッカで取材してこられた最新の映像を中心に見せていただきながら話をお聞きしました。「ISの支配地域は、IS敗退後、どうなったのか、何が起きていたのか」特に女性や子どもの状況について話していただきました。
お話の後には玉本さんが、手作りの(シリアのお母さん直伝の!)お菓子と濃厚なアラブコーヒーを振る舞ってくださいました。美味しいお菓子をいただきながら、改めて平和の尊さを胸に刻むひと時となりました。
—– 以下は玉本さんの講演の概要です—–
◆ISの支配下で何が起きていたのか(2015年~IS公表写真など)。
「たばこを吸った」「女性なのにヒジャブを着用していない」などの理由によって日常的にムチ打ち、時にはスパイ容疑で斬首、などの公開処刑が行われていた。現地の人々の多くは、ISに憎しみを持っていたが、処刑への恐怖から何もできなかった。
◆その後ISは敗走(2018年10月玉本映像)
クルド人主導のシリア民主軍やアメリカを中心とする有志連合軍などの掃討戦によりISは敗退したが、空爆などで多くの市民が巻き込まれていた。2018年の取材時、ラッカは空爆によって瓦礫の街になっていた。
◆シリアのIS支配下にいた子ども達(2015年IS映像、2018年10月玉本映像、写真)
IS支配下ではそれまでの学校は閉鎖。ISがつくった学校では「戦って死んだら天国に行ける」という聖戦(ジハード)の考えなどを徹底して教えていたため、一般市民の親たちは自分の子どもがISの考えに影響を受けることを恐れ、ISの学校に行かせなかった。学校へ行けない子どもたちの中には「かくれ学校」に通う子ども達もいた。
◆世界から参加したIS戦闘員、およびIS戦闘員の子ども達(2018年10月、2019年10月玉本映像)
フランス、ベルギー、イギリス、アジア諸国など世界の国々からISに参加した外国人は2,3万人。戦闘で捕まったIS元戦闘員の多くは現在、シリア北東部の拘置施設などに収容されている。インドネシア出身の女性はISに参加したことを後悔していると話す。戦闘や空爆でISの両親を亡くした外国人のこどもたち24人が、シリア北部の避難民キャンプで生活していた。パスポートなど身元を証明するものを所持しておらず、かれらを引き取る国はひとつもないということだった。その後、彼らはシリアの他の場所へ移送され、現在は国際支援組織がかれらの面倒を見ている。
◆ISの少年戦闘員訓練所の様子や前線に出た子ども達(2017年IS映像、2019年11月玉本映像)
ISは、親がIS戦闘員の子どもや、ヤズディ教の信者だった少年らをIS戦闘員訓練所に入れ、ISの教えを刷り込んでいった。訓練を受けた13歳14歳のヤズディ教の兄弟が笑顔でトラックに乗り込み、イラク軍に突っ込んで自爆する悲惨な映像もあった。
最後までシリアの前線で戦った17歳のIS元少年戦闘員(ヤズディ教徒)にも会った。 ISは彼にヤズディ教は悪魔崇拝という考え方を徹底して刷り込んでいた。今も完全に洗脳は解けていない。この子たちについては、これからも継続して取材をしていきたい。
◆日本もひとごとではない。かつての日本でも・・・。(写真資料)
ISは残酷と思われるだろうが、かつて日本にも特攻隊を志願した少年飛行兵がいた。沖縄戦では鉄血勤皇隊もあった。今回取材した子ども達と同じである。環境に影響されやすく、信じやすい子どもたちは戦争に利用されやすい。他人事ではない。
◆ISの被害は、まだ終わっていない(2019年10月玉本映像)
かつてISによって処刑された人の家族などは、今も苦しんでいる。ラッカでは、どれくらいの人がISに殺されたかわかっていない。現在もISに殺害され埋められた遺骨の発掘作業が行われている。シリアやイラクのIS支配地域はほぼ消滅したが、平和になったとはいえない。
◆最後に
戦争が起きるとどうなるのかを知ってほしい。戦争の「石」が転がり出したら、すべてを巻き込み、女性や子ども、誰も逃れられなくなる。被害者だった人たちが、加害者側にもなる。今の戦争を知ることは自分の未来を見据えることにつながる。
(2019年12月7日 すてっぷセミナー室にて開催)