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長年にわたり移住労働者の権利について現場から研究・発信されている藤本さんをお招きして、まもなく始まる家事労働分野の外国人労働者受入れについて、その現状や問題点をお聞きしました。豊富なご経験に基づいた中身の濃いレクチャーでした。要点を以下にまとめます。
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「日本再興戦略」(2014改訂)にて、女性の活躍推進のための外国人の活用が決定。
「技能実習制度における介護分野での外国人の受け入れ」「介護福祉士を取得した留学生の就労許可」と並んで、「国家戦略特区における『家事支援人材』の受け入れ」を進める方針が打ち出される。
■その目的は?
家事労働の人材が不足しているからではなく、在日アメリカ経済界からの要請が発端。(女性社員の中途退社防止、滞日駐在員に英語を話せるお手伝いさんが必要、など)
国会にて野党からの質問「なぜ外国から新規に受け入れるのか?」→厚労相から具体的回答なし。
公的な介護(または保育)サービスを縮小し、各家庭の「自己責任」を拡大するための布石という隠された意図も感じられる。
■大阪でも受け入れが始まるのか?
国からの呼びかけに真っ先に橋下大阪市長(当時)が手を上げ、それに追随して松井府知事が受け入れを表明。スタート時は大阪市のみ。豊中市は当面、受け入れる予定なし。神奈川県は2016年4月から、大阪市は6月から開始予定。
①炊事、②洗濯、③掃除、④買物 ⑤関連する子どもの世話や保護 ⑥高齢者の生活に必要な行為の代行・補助(身体介護は含まない)。住み込みは禁止。
⑤と⑥については、ベビーシッターや介護労働との境目があいまいで要注意。
■受け入れ事業者の条件は?
家事代行サービスの実績のある会社(ダスキン、パソナなど)に加えて、いつの間にか、高齢者サービスの会社も参入可能に、制度が変えられている(介護人材を集めるため?)。
■人権上、どのような問題が懸念されるか?
・一般的な家事に加えて、子どもや高齢者の世話など利用者の過剰な要求にさらされる可能性と、それに伴う事故やトラブルのリスク
・派遣先の家庭でセクハラやパワハラなどの可能性(利用者への人権啓発が必要)
・労働者に、雇用主や就労先、住居などを変更する自由がない。
・強制帰国などの制裁を心配して、派遣会社へ権利を主張できず我慢する恐れがある。
・賃金は日本人と同等以上とされているが、日本の家事労働者の労働条件自体がよくない。
■「女性が輝く」ための効果は?
1時間3,000円以上の利用料を払える女性にとっては有効な選択肢になりうるが、それ以外の女性には「恩恵」はほとんど届かない。シングルマザーにも手が届かない。
今後、利用料の引き下げが予想されるが、その場合は労働者にしわ寄せがいく恐れがある。
<参加者からのアンケートより>
*家事支援人材の受入れの流れ、課題についてとてもわかりやすい説明でした。誰のための制度か・・・そもそものところに大きな疑問を感じました。
*閣議決定された経緯を知って納得。市民も賢くならないといけないとつくづく思いました。
*大変わかりやすく勉強になった。「外国人材」を受け入れる以上、労働者の人権を重視し、生甲斐をもって働いてほしい。国が民間への丸投げをすることを日頃から見ておくことが必要です。
*人間らしく子育てや家事もしながら働けることを目指すべきなのに、それに逆行するような法案だなあと思いました。一億総働きバチにならなくてはならないのでしょうか?
*今後の実態についても、ぜひまた藤本さんから聞きたいです。
まもなく実際の受入れがスタートします。多文化共生社会を進めていく上でも、私たちも市民として厳しい目でこの制度の成り行きを見張っていきたいと思います。 (TIFAセミナーグループ)